<あなたを襲う新型病魔> 21世紀病を根絶せよ!
アドバイザー
岡永歯科医院 岡永覚院長
口の中のトラブルを心身全体の問題と考え、これまでの歯科の限界を超えた診療を目指している。
かみ合わせやストレスが原因
不適切な歯科治療で悪化も
<顎関節症>
「近所の歯科医でむし歯の治療をしてからずっとアゴの具合が悪い。」
こんな訴えをもって千葉県市川市の岡永歯科へ相談に訪れる患者が多い。たいてい「顎関節症」と診断される。アゴの周りの筋肉の痛みや違和感がつきまとい、また口を大きく開けると、コキッという音がするといった特徴もある。大半は頭痛や首・肩のこりも伴う。
「まだ、歯科医にも、この病気はよく認知されていません。何件も歯科をはしごしながら『異常はない』と言われて、遠方から来院する患者さんもよく見られます。」
岡永覚院長はこう話す。今やにほんで数百万の患者がいるというこの病気は、両耳の前辺りにある顎関節の靱帯損傷や関節円板がズレたりすることで起こる。
「かみ合わせが悪いという場合もあり、不完全な歯科治療や歯ぎしりの癖が原因になっていたりすることもあります」
顎関節症の原因は実に多岐にわたる。まだ完全に治療法が確立していない。
「例えば歯科治療で歯を抜いたり、削ったりしたあとほうっておくと、かみ合わせが悪くなることがあります。また、歯ぎしりの治療のため歯列を矯正したことが、かえってかみ合わせ不良を招くケースもあります。」
歯のかみ合わせが悪いことが顎関節症の原因なら、スプリントといわれる合成樹脂製の薄い板を使用したり、時には歯を削ったりしてかみ合わせを改善するなどの治療が必要になることがある。しかし、こうした顎関節症の治療が不適切であるため、新たなトラブルが生み出されるケースも出てくる。
「この病気は歯だけ診ても治せないのです。ストレスがかかわっているケースも何割かあります。ストレスのため歯をかみしめすぎたりする習慣が原因になるのです。また、ほうづえなどの習慣が、かかわっていることもあります。」
岡永歯科医院には顎関節症に対応するために、カイロプラクティックなどの手段を施すための理学療法室が併設されている。
また、カウンセリングなどの心理療法が併用されることもある。
「私の調査では顎関節症の患者さんの96%は首と肩に問題を抱えているので、これに対して理学療法を行なって改善すると、あとの治療がスムーズにいきます。しかし、すべてがうまくいくわけではなく、心理療法でカバーするわけです。」
また、応急処置的に、抗うつ剤、筋弛緩剤などの薬物が使われることもある。もっとも薬物療法自体が患者に副作用などの不安を与え、症状を悪化させることもあるので、その場合は漢方薬を使っている。
「原因によって治療期間が異なりますが、数か月かかるのが普通です。無理のない方法で根気強く取り組むことが必要です。」
(医療ジャーナリスト・林義人)
<自己診断>
●あごの周りの筋肉に痛みや違和感がある。
●口を大きく開けたとき、コキッという音がする。
●噛み合わせが悪い。
●歯ぎしりをする。
●頭痛、首・肩のこり。
●背骨が曲がる。
●手足の関節が痛む。