咀嚼(噛むこと)の重要性
高齢者を取り巻く環境
高齢者の食事の現場で、時として「食べられない老人」が作り出されている状況が散見されます。
この状況を生む要因には様々あると考えられるが、そのひとつとして「食べやすい食事=柔らかい食事」という誤解が挙げられます。
しかし、食べられない原因が、「入れ歯が合っていない」、「咀嚼に関連した筋肉の機能低下」などの場合、これらの不具合に対する対処がなされない限り、さらなる不具合を招く恐れがあります。
つまり、柔らかい食事を摂ることにより、咀嚼関連筋、舌運動さらには嚥下運動に関与する器官の仕事量は減少します。これは、廃用症候群進行のパターンとなっており、初期の段階では自覚症状が無いものの、この悪循環を断ち切れず機能低下が高度に進行して初めて、「噛めない」、「食べられない」、「飲み込みにくい」という自覚症状が顕在化します。
しかし、この段階まで機能低下が進行すると回復がなかなか困難となり、栄養面などの全身状態にも二次的な不具合を引き起こしているケースも少なくありません。
この問題の解決は、早期に早期に入れ歯や口腔リハビリなどの的確な歯科的対処が必要となります。
入れ歯のチェック
歯が無い状態で放っている場合、入れ歯を作って噛めるようにする必要があります。また、入れ歯があっても不具合が認められる場合には、入れ歯を調整する必要があります。
入れ歯がある患者様の口腔ケアを行う前後には、次のことを確認しましょう。
【入れ歯を外す前】
@入れ歯をした状態で下顎の不随意運動(本人の意思によらない運動)などがないか?
A入れ歯が浮いていないか?
B入れ歯による歯や粘膜の痛みがないか?
【入れ歯を外した後】
@入れ歯がしっかりと吸着しているか否か?
A入れ歯の表面や人工歯、床の部分が汚れていないか?
これらの不具合が認められる場合、入れ歯の調整が必要となります。
ただし、粘膜と接している面ではなく、人工歯や床などが汚れているのは、頬や唇、舌の動きが衰えているサインです。咀嚼や嚥下がスムーズにできていないと、食べ残しや食べかすが入れ歯に付着します。
こうした汚れが認められる場合には、入れ歯の調整を行うよりも口腔リハビリを行うことで、汚れが付かなくなることもあります。
咀嚼(噛むこと)の重要性
咀嚼(噛むこと)には、たくさんの効果があります。噛むことで分泌される唾液には、食べ物の残りかすや細菌を洗い流し、お口の中をきれいにする効果もあり、むし歯や口臭の予防につながります。
また、噛むことは、筋肉や舌などを意識的・反射的に反応させ、脳の老化を防ぎ、運動機能を高めます。顎を動かすことが脳への血の循環を促進します。
そして、食事をおいしく味わうことは、楽しい人生を送ることと同時に、全身の健康状態を維持回復させます。噛む能力が減退した高齢者は、脱水や栄養障害などを起こしやすく、低栄養が他の病気を誘発したり憎悪させたりする潜在的な要因となっています。歯科検診や歯科治療を受けて、しっかりと噛めるようにしましょう。
一般的な口腔ケアの方法
口腔ケアの方法
入れ歯と賢くつき合う方法
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咀嚼(噛むこと)の重要性
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